SP:ALTEC 820A System

劇場や屋外などのPA機器メーカーだったアメリカのALTEC社1955年に発表したのが、当家のスピーカー「820A」です。ググってみますと、数件お使いの方がいらっしゃるようです。広島ではもう1台と聞いています。日本には10数台くらいは現存しているのでしょうか?
1955年というのは諸説ある。1952年説もあるし、1954年のALTECの民生用カタログには「820C」というシステムが掲載されている。現在のAltec Lansing社のサイトによると1955年の発表となっている。
それまで映画館や劇場用としての「Voice of Theater」ブランドを初めてホームオーディオに投入した「820A」。そのユニットの構成に当時のPAシステムの流れを色濃く感じることができます。
・キャビネット・・・821A コーナー型
・高音域・・・・・・802D 2inchドライバー
・高音域ホーン・・・H-811B マルチセルラホーン
・低音域・・・・・・803A 15inchウーハー×2発
・ネットワーク・・・N-800D
*マルチセルラホーンが比較的近年の811なので、製造はおそらく1950年代後半であると推察されます。
120cmに届こうかという高さで、幅は1mを超えます。その中に15inchのウーハーを二発とマルチセルラホーンを押し込んだ大型システムです。
そんな、オーディオ初心者がいきなり使うには全くもって向いていないスピーカーでしたが、その雄大で朗々と鳴る姿に惚れ込んでしまったのでした。
さて、製造から50年以上となるこの御大を改装したての当家に運び込んだ時には、さすがに極度のやってしまった感に襲われましたが、これまでの様々な改善と使いこなし(全部教わって、なんですが...)で、今ではジャンルを問わない再現力と味を持っていると自負しています。
■音質
周波数特性は、いわゆる「かまぼこ型」。高域、低域はダラ下がり、中音はタップリとふくよかです。典型的なビンテージサウンドといえますが、高能率でピックアップの良いユニットは、トランジェントも良好でもっさり感はありません。もちろん15インチ大型ユニットならではのスケール感を兼ね備えており、音像の大きさや音場の広がりに不足を感じることはありません。
キャビネットの素性の良さも特筆すべきでしょう。キャビネット内部の音の反射による澱みを嫌ったコーナー型で、造りもかなりしっかりしています。適切な振動対策を行うことで、50年でしっかりと乾燥した米松合板製のキャビネット自体も朗々と歌います。
■これまでの道のり
・Dentecオリジナルネットワークへの装換

標準ではN-800Dですが、よりクオリティの高い音質を求めるために、サウンドデンのネットワークに装換し、さらにキャビネットの外に出しました。手巻き空芯コイル、高級パーツを採用し、さらにクライオ処理まで行われたネットワークは、とてもシンプルな構成で並々ならぬノウハウの存在を感じさせます。SNや分解能、表現力はノーマルのネットワークとは比較になりません。どんなジャンルを聴いても破綻のない安定感はこのネットワークだからこそ。うちの820はジャズだけでなく、クラシックの大編成モノでもバッチリ鳴ります。
・ダイアフラムをラジアンに交換(2004.04.26)
・振動対策
・Fostex T-925ツイーターの追加(2004.7)
・ツイーターを音研OS-5000T esprit に変更(20006.11)
■ビンテージスピーカーとの付き合い方
まだ3年ちょいしか使っていないのに、付き合い方、というのもオーディオベテランの方に失礼ではありますが、今の感想として述べてみることとします。
・コンポーネントの時代を合わせるという近道
1950年代の設計である820A。当時想定されたコンポーネント選びを踏襲することが近道となりました。アンプは当初、管球アンプのMcIntoshのパワーMC240+プリMX110という組み合わせで鳴らしていました。このアンプ同士の音質的相性も良好で、プリを入れることで信号が劣化することも目をつむれるほどバランスの取れた音質でした。ただ、言ってしまえば、ここまではよくあるビンテージサウンド。さらに時代の近いウエスタンエレクトリックの設計の流れをくむKANNO300Bシングルアンプに変更してからは、細やかな表現力とパワーを得ました。McIntoshよりナローレンジで出力も小さいアンプなのに!
820Aが発売されたのは50年代ですが、ユニットの設計は30~40年代です。さらにその頃の設計思想に合致したアンプを使用することで、当時想定された音質が実現できたのでしょうか。
オーディオの相性とは、1+1=2ではなく、1+1=3や1+1=4という結果を得る、ということを実感しました。
・高能率
820Aなど、当時のビンテージスピーカーは100dbを超える高能率。当時パワーのあるアンプが一般的でなかったこともありますが、小さなパワーで駆動するピックアップの良さは、逆に恐ろしいことでもあります。
他のコンポーネントの相性をはじめとして、中途半端な使いこなしでは音にならない。正にここがビンテージオーディオのセオリーをセオリーと成らしめる部分と言えるでしょう。
しかし、ある一定のウェルバランスを得れば、ここからが使いこなしの真骨頂。ちょっとした使いこなしの工夫や改善で、820Aはビンビン反応してくれます。最新の振動対策やクロック交換などの変化が如実に音に現れるのです。これで終わり、は無く、これからがある世界。繊細でありながら懐の深さを感じさせる、それがビンテージオーディオの世界ではないでしょうか。
■820Aを所有するということ
うちに820Aが来たときのやってしまった感は、3年経った今思うに、全くの杞憂でした。
当初オーディオの諸先輩方によくいただいたアドバイスは「3年待ちなさい。それだけでも思うような音で鳴るようになる」でした。 今まさに!!(w
このスピーカーと出会えて良かった。そう思います。しかし同時に、このすばらしい先人達の遺産を、次の世代に残さないといけないな、820Aは自分だけのものなんかじゃなくて、次の世代への預かり物なんだ。そうしみじみと考えちゃったりしています。
■820A資料集
・Lansing Heritage Libraryをたどると設計図やカタログが置いてあります。JBL関連の資料も多い。
・Voice of theater 「ALTEC 820 Corner Horn」のリンクから当時のカタログを見ることが出来ます。スコットさんが欲しがっているようですが(w
